こんにちは、尼花(あまはな)こと、尼ヶ辻花子です。
台風が、日本を通過していきつつありますが、私の住む関西では、雨も小降りになってきました。
そんな小雨のなかを、自転車でゆらゆらと出かけた話に、少しだけお付き合い頂ければ幸いです。
土曜日の郵便局は午後6時まで
雨降りの土曜日。
台風の影響で、昨日から降り続いていた雨も、小降りになってきて、そろそろやむかな?と窓を何度も開けては確かめていました。
というのも、どうしても今日中に送りたい郵便物があったのです。
でも、今日は土曜なので、中央郵便局まで出向かなければなりません。なんとか雨が上がってくれたら・・・という願いもむなしく、やみそうでやまない雨が続いていました。
以前なら、中央郵便局は遅くまで開いていて、速達なら24時間体制で受け付けてくれていました。
でも、コロナの影響で、夕方には閉まってしまうようになりましたね。
私の住むエリアの中央郵便局までは、歩くと45分、自転車だと20分ほど。閉まるのは夕方6時なので、5時までには家を出たいところです。
願いむなしく、5時10分前になっても、雨はやみそうにありません。
そこで、電車でいくか、歩いていくか、自転車に乗るかの選択肢のなかで、少し迷ったあと、自転車で行くことに決めました。
迷っているあいだに、もう、靴箱上の棚の戸を開けて、レインコートを取り出していたのですが・・・行く気満々ですね。
私のレインコートは、自転車用の上下セパレート・タイプです。
今のアパートに住み始めた頃、自転車移動が多いので購入しました。ただ、上下セットの上着だけは、何回も使ってきましたが、下のズボンまで身に付けたことは、この3年で1~2回しかありません。
だって、レインコート、暑いんですよ・・・今は、もっと良い商品が出ているかもしれませんが。
今日は20分もの道のりなので、このズボンまでしっかりはいていくことにします。
フードもしっかりかぶって、用意万端。小雨のなか、自転車をこいでいきました。
でも、こぎだしてすぐ、かすかな後悔が湧いてきました。
ちょっと、雨、強くない??
思ったよりもしっかり降っている雨に打たれて、これは、家に戻って、傘をさして歩いていく方がよいのではない?と自問自答しつつも、
まあ、行ってしまおう!という気持ちが勝って、そのまま進むことにしました。
自転車旅の行きと帰り
幸い、それ以上雨が強くなることはありませんでした。ただ、ずっと、しとしとと降り続けていたので、フードキャップを外すことはできません。
自転車は、ママチャリなので、背中を曲げてこぐ必要はなかったものの、フードのひさしにたまった水滴が、信号で止まった際には、顔や体に落ちてきます。
うわあ・・・と心の中で声をあげながら、こいでいきました。
郵便局までは、ほぼ一本道です。たくさんの車がびゅんびゅん通っていく国道の横を走りながら、前から、赤いカッパを着て自転車に乗った人とすれ違いました。
私のカッパは青色です。
カッパを買うときに、赤にするかどうか迷ったことを思い出しました。いっそ赤色にしたら、目立つけれど、かえって安全性は高いかもしれない・・・
でも、無難な青にしました。そういえば、カーキにしようかとも迷っていました。カーキはちょっと高かったので、安い方の青にしました。
いま、前からやってきた赤いカッパの自転車の人を見ながら、赤でも良かったかなー、きれいだなーとつぶやいてしまいました。マスクもしているせいか、男か女か分からなかったけれど、なんとなく男性だったような気がします。
赤いカッパを着た男と、青いカッパを着た女が、自転車ですれ違う。
これまで、カッパってなんかださーい、と思っていたんですが、この光景を俯瞰してみると、ちょっとドラマチックな気がしてきます。単純に、配色だけでも、美しい。
ペラペラのナイロンのやすもん(私のは)カッパも、雨降りの道ですれちがう人間たちのワンシーンとしてみることで、一瞬、非日常のきらめきが放たれたような気になりました。
そこから少し先の道で、左折して、小さな川沿いの道を抜けていきました。
ここは、春には桜並木が花開いて、たくさんの人が訪れる道です。
でも、今日は、夕暮れの薄青い影を落とした、ただの緑と茶色の並木道。人気のない道を走りながら、ふっと、葉の香がした気がしました。マスクから鼻だけ出してみると、そうです、これは、桜の葉っぱの匂いです。桜餅の匂い。雨に打たれた木々が、負けじと薫りを振りまいているような気がしました。
さて、無事に郵便局について、荷物を出し終えて外に出ると、暗くなり始めた空が、妙に明るくみえました。雨雲のさらなる上空で、夕焼けが起こっているような感じです。
わずかにピンク色にも見えて、空全体が、桜の花びらにつつまれているような錯覚に陥りました。
なぜか、宇宙、という言葉が思い浮かびました。花びらにつつまれた、小さな虫のように、車も人も道路さえもが、葉っぱの影に隠れた存在でしかなくて、その花や葉の外側に、だだっ広い宇宙が広がっている・・・
その宇宙が外界だというのなら、内界にいる虫のような私たちは、小さくも大きくもなれないし、なる必要もない。宇宙の外にいる誰かが、大きな手の指先で、この花びらをちょっとつまんでしまったら、虫はあっというまに世界からいなくなる。でも、現実の虫たちは、摘み取られることはなく、それぞれに動いて、息をして、桜の花びらのこちら側で、笑ったり、心打たれたり、優しさを感じたりしている。
宇宙のやさしさと息吹が、虫のなかに、絶えず吹き込まれていくかのようです。
ただ、郵便物を出しに来ただけのことが、えらく大きな話になって、私のなかに降りてきました。
雨は相変わらず降っていて、カッパを着た私の体全体に、水滴が流れ落ちてきます。
それでも、このママチャリから見た風景は、まるで旅をしているかのような、新鮮な光景になりました。電車に乗らず、傘をさして歩くのでもなく、雨に打たれて乗る自転車の旅。そう思って、ペダルをこぐと、雨に降られることが、逆に楽しいことのような気になってきます。
家の近くの横断歩道では、水色のカッパを着て自転車に乗った、小学生の男の子とすれ違いました。
水色も、いいなあ。